「渋谷・円山町のスイーツホテルに行ってみたい！」編

更新日：2023-01-21 06:00

投稿日：2023-01-21 06:00

「お菓子の家」に泊まるとしたら…

　しかし残念ながら、その時はカメラマンとの写真撮影、つまり仕事で来ていたので、限られた時間で良い写真を撮ることに集中しつつ、リゾートバイトというのはこんな気分なのだろうか、と想像するに終わった。

　きっとスイーツホテルなら、その非日常感はアジアンリゾートの比ではない。似たようなホテルはバリ辺りにあるだろうが、お菓子の家は現実に存在しないからだ。

　まずはどの部屋に泊まろうか。ひたすらスマホの画面を拡大して、心を躍らせている。シェル型のチョコレートを模したベッド、大きなドーナツのクッション、熱帯魚が泳ぐスイーツ水槽、チョコレート風呂。セックスという生々しい行為がデフォルメされたスイーツに飲み込まれ、屈託で凝り固まった心も、冷静に考え続けてしまう脳も、きっととろとろに溶かしてしまうだろう。

あとは相手を見つけるだけ

性の屈託が詰まった新刊、出ました。

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　あとは相手を見つけるだけだ。大好きだったビジュアル系バンドマン達のインスタには、小学生くらいの子供が登場しはじめている。彼らは宮殿になど住んでいなかった。ちゃんと、現実を生きていたのである。

　次回の更新で「『スイーツホテルに行ってみた！』編」をお届け……できる気がしない。

新井見枝香

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元書店員・エッセイスト・踊り子

1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」（千早茜と共著）ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

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