両乳房と卵巣を失った40代主婦、婚外恋愛の彼と関係が狂い始めて #1

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2024-09-03 13:54
投稿日:2024-02-02 06:00

脱毛した姿も受け入れて欲しかったのに

――続けてください。

「乳房を失い、さらにショックだったのは、髪がごっそり抜けたことです。あらかじめ聞いていた副作用ですが、さすがに衝撃的で…。

 私は元々セミロングヘアだったのですが、ちょっと頭をかいただけで大量の髪が抜けてしまう。それも、てっぺんの毛が剥げ落ちて、耳のあたりは生えているという落ち武者のような風体です。

 ニット帽をかぶって過ごしていましたが、脱毛した私も受け入れてほしいと、豊さんが自宅に来てくれた際、わざとおどけて笑いながら、ニット帽を脱いだんです。

――豊さん、見て。落ち武者ヘアになったわ。

 てっきり笑ってくれると思っていたのですが、明らかに彼の顔色が変わりました。

(えっ、見せるべきではなかったの?)

 そう思った時には後の祭りでした。彼はお見舞いのお菓子を置いたまま、

――ごめん、仕事が立て込んでて、また来るから。

 早々に帰っていったんです。LINEでの連絡も徐々に減っていき、不安に思っていたタイミングで、翌年の1月、次は卵巣の切除手術を受けました。

乳房の傷跡…夫も妹も「見たくない」と

 卵巣のおかげで女性ホルモンのエストロゲンが分泌されるのですが、この女性ホルモンこそが『がんのエサ』になるのです。除去後、

(これで本当に女じゃなくなった)

 そうぼんやりと考える自分がいました。

 胸の膨らみと乳首を失った胸元はえぐれ、真横に20センチほどの傷跡が残っています。

 一度、夫にこう言ったんです。

――私の胸の傷、見てみる?

 すると、

――やめてくれ、見たくない。

 即答されて、さらにショックを受けました。妹に見せようとしても、『見せないで』と拒否されて…。さすがに、しんどかったですね」

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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