更新日:2024-08-30 06:00
投稿日:2024-08-30 06:00
1週間後の再会は…
――運命は本当に不思議なものですね。続けてください。
「7年の時間が経っているので、私の容姿の衰えは否めません。でも、彼と会う1週間後に向けて、ランニングと食事法でダイエットに励みました。デート前日にはエステを予約して…いくら別れた彼とはいっても、『女って、いつまでも綺麗だと言われたい生き物なのね』と苦笑しました。
再会当日の夕方、待ち合わせのカフェに行くと、彼はすでに来ていて、私の姿を見つけると、立ち上がって軽く手を挙げたんです。
懐かしい彼の仕草でした。少し痩せた輪郭が、彼の端整な面差しを際立たせていましたね。切れ長の瞳と高い鼻梁。笑うと左側にだけ出るえくぼも当時のまま。
――久しぶり。
私がカフェテーブルの向かい側に座ると、
――今日は時間を作ってくれてありがとう。
彼は丁重に頭をさげました。彼と同じコーヒーをオーダーすると、コーヒーカップを握る彼の大きな手をしげしげと眺めたんです。
当時の気持ちに引き戻されて
(この指が、何度も私を悦ばせてくれたんだっけ…)
それだけじゃありません。彼の香りがほんのり漂ってきて、急速に当時の気持ちに引き戻されました。
――奈緒子、すごい資産家に嫁いだって聞いたよ。
奈緒子と呼び捨てにしてくれることに、心がざわめきました。
――…あなたの奥さんも常務の娘さんだから、リッチな生活を送っているんでしょうね。
私は少しだけ皮肉をこめたんです。それに資産家に嫁いでも、吝嗇家(りんしょくか)の夫は必要最低限の生活費しかくれなかったため、私は時々近所のブティックに働きに出たりもしていて…。幸せとは程遠い生活をしているのよ、と心の中で毒づきました。
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