不倫は悪なのか。作家・鈴木涼美氏が提起する日本の結婚制度の限界…それでもなぜ結婚する?

ミクニシオリ フリーライター
更新日:2024-10-06 17:31
投稿日:2024-10-05 06:00
『不倫論――この生きづらい世界で愛について考えるために』(平凡社)を刊行した作家・鈴木涼美氏とともに、現代女性における「不倫リスクの増加」について考察した前編記事

「日本のセックスレス」は文化の問題。不倫は悪なのか?

 後半は、不倫を考えるにおいて欠かせない「夫婦のセックスレス問題」をはじめ、結婚願望がなかったという鈴木氏が結婚を経て、生活や価値観にどんな変化があったのかも掘り下げていく。すると、本の中では語られていなかった鈴木氏自身の「結婚観」も見えてきた。

 夫婦のセックスレス問題は、世間で見聞きする不倫のほとんどに関係していると言っても過言ではない。不倫が題材となったエンタメ作品や、ネットで見かける当事者の不倫告発も、決まって夫婦間はセックスレスであるという事実がセットだ。

「もともと西洋化する前の日本は、カップルよりも家族というユニットを大切に考えてきましたし、今もその価値観は残っているでしょう。家族だからこそ性的な目で見づらいとか、夫婦間にセックスがなくとも、不倫があるからこそ家族関係は継続できているという考え方もありますよね。

 日本の生涯セックス回数は世界でも最低レベルだと言われ、愛し合う情熱を維持していく意思は強くない。そもそも一つ屋根の下で暮らしながら性関係を維持するなんて、工夫がないと成り立たないものだと思っています」

義務教育では教えてくれない

 日本の結婚制度のアンビバレンスは、西洋から急激に流れ込んできたキリスト的純愛文化と、この国古来からの家族制度とのブレによるものも大きい、と鈴木氏。確かに、不倫というワードを掘り下げて考えていくと日本に今ある「一夫一妻」の結婚制度や、家族愛と恋愛を分けて考えがちな国民性にも目を向けざるを得ない。

「その割に、義務教育で結婚にまつわるノウハウなんて教えてくれませんよね? 西洋風のラブラブな夫婦像を目指したいのか、日本古来の盤石な家族像を築いていければいいのか、本来なら、当事者同士が結婚前にもっとしっかり話し合うべきなのかもしれません」

AVでセックスを覚えた男と、少女漫画で恋愛を覚えた女

 周囲に配慮し合う文化が強い日本では、交際相手とですら深い意味で結婚観を話し合うことは簡単ではないのかもしれない。結婚した後のことも2人の関係のことも、未だ結婚に至っていないカップルにとってはかなりセンシティブだ。

「少し主語が大きいかもしれませんが、日本のカップルの多くは、AVでセックスを覚えた男と、少女漫画で恋愛を覚えた女です。どちらにも希望という名の妄想や思い込みがあるので、最初から意見がぴたりと合うわけがない。

 文化や思想、価値観の違う男女が家族としてうまくやっていくためには、恋愛感情を外注するのか。それともキリスト教的な純愛を貫くために、お互い切磋琢磨するのか…。はじめから考え方が似ている人と結婚できれば、不倫がきっかけで離婚することはなくなるかもしれませんよね」

 コミュニケーションを怠れば、最悪の場合、不倫がきっかけとなって、離婚も含めた将来のすり合わせを行うことになるかもしれない。夫婦にとっては避ける方が難しい不倫やセックスレスで心身を疲弊させないためには、まずは自身が目指す結婚像を明確にして、先に話し合っておくしかない。

ミクニシオリ
記事一覧
フリーライター
フリーランスの取材ライター・コラムニスト。ファッション誌や週刊誌、WEBSITEメディアなどで幅広く活動。女性向けのインタビュー取材や、等身大なコラム執筆を積極的に行う。いくつになってもキュンとしたい、恋愛ドラマと恋バナ大好き人間。
XInstagram

関連キーワード

ラブ 新着一覧


女性だって告白したい! 成功率を上げるタイミングと心構え
「好きな気持ちが苦しく、どうしても告白したい!」そんな思いに駆られている女性は多いでしょう。思い余って告白をするのも良い...
孔井嘉乃 2019-05-28 16:55 ラブ
DV夫と別れた女性が密かに傷ついている 周囲の心ない言葉3選
 DV夫との離婚が成立し、前向きな気持ちで新しい人生を歩みだしている女性に、悪気がなくとも、傷つく言葉をかけてしまう人も...
並木まき 2019-05-27 06:00 ラブ
愛人は不幸じゃない 非モテ女子は彼女たちにスキルを学んで
 昔から、なぜ「愛人=不幸そう」と思われるのでしょう?そもそも「愛人」という単語がなんとなく後ろめたい感じだったり、淫美...
リタ・トーコ 2019-05-27 06:06 ラブ
ホテル代は割り勘?おごられる? 意外だった“男女別の違い”
 ひと昔前は、デートの代金は男性がおごるもの、というのが当たり前だった時代がありました。  今は全てを男性におごっても...
深志美由紀 2019-05-26 06:00 ラブ
交際歴2年…彼氏にプロポーズさせるにはどうしたらいいの
 電子書籍も含めて、発売たちまち6万部突破のベストセラー『魔法の「メス力」』の著者で恋愛コラムニストの神崎メリさん...
神崎メリ 2019-05-27 14:25 ラブ
男性はやっぱり若い女性が好き?大人女性が持つべき魅力とは
 今や、15〜20歳離れた「年の差婚」は珍しくありません。もちろん女性が年上だというケースもありますが、どちらかといえば...
孔井嘉乃 2019-05-25 06:00 ラブ
「恋人」「同棲」に見せかけた支配の檻 美沙さんのケース#5
 二人分の生活費をまかなうため、仕方なく風俗店でバイトしていた美沙さん。健斗には隠していたのに、ある夜突然、源氏名で呼ば...
神田つばき 2020-01-11 07:06 ラブ
義母が嫌で外泊、若い男と浮気…悪妻と離婚した夫の言い分
 離婚した男女の双方から話を聞くと、同じ出来事への認識が大きく異なることも珍しくありません。夫と妻、双方の言い分をご紹介...
並木まき 2019-11-13 18:16 ラブ
「先に浮気したのは…」離婚した夫に“異議あり!”な妻の声
 離婚した男女の双方から話を聞くと、同じ出来事への認識が大きく異なるケースも珍しくありません。夫と妻、双方の言い分をご紹...
並木まき 2019-05-24 06:00 ラブ
ヒモ以下の“ロープ”と呼ばれた男…法廷で暴かれた惨めなウソ
 甘酸っぱい恋から始まる男女の仲も、時間の経過や環境の変化とともに色あせてしまうもの。痴話ゲンカから果ては刃傷ざたまで、...
高橋ユキ 2019-05-24 06:00 ラブ
イケメン101人…韓国男性アイドルの選考番組がスゴい!
 IZ*ONE(アイズワン)という2018年秋にデビューした12人組女性アイドルグループは、韓国で放映されたオーディショ...
内藤みか 2019-05-23 06:07 ラブ
彼氏と長続きしない…“飽きられ女子”が犯している間違い3選
 学生時代は長く男性と付き合えていたのに、大人になってからの方が彼氏とうまく行かなくなった……そんな「アラサー病」が流行...
ミクニシオリ 2019-05-23 06:49 ラブ
大人の恋愛で駆け引きはしない方が良い理由! NG事例を解説
「恋愛上手な女性」と聞くと、「男性を手玉に取る駆け引き上手な女性」というイメージありませんか?でも、実は、大人になればな...
孔井嘉乃 2019-05-23 01:30 ラブ
彼氏のスマホチェックをやめるには? 無限ループに陥る前に
 いけないことだと分かっていながらも、ついやってしまう彼氏のスマホチェック。1度限りで終わらず、気づけば無限ループに陥っ...
孔井嘉乃 2019-05-21 06:00 ラブ
“平成ジャンプ”ですが何か? 令和元年の合コンで受けた屈辱
 2019年5月1日に新元号が施行され「平成」から「令和」の時代となりました。世間は令和フィーバーで何かと盛り上がりまし...
田中絵音 2019-10-21 11:45 ラブ
実は狙い目!「理系男子」と話が弾むためのトークテクニック
 最近になって結婚相手として評価急上昇中の「理系男子」。浮気をせず真面目である、意外と高収入で安定している、言葉で伝えた...
しめサバ子 2019-05-20 06:20 ラブ