「あんぱん」一瞬のヤムおんちゃんに嵩は気づいたか? 寛の名言が“友蔵の俳句”並みに楽しみな件

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-05-03 16:00
投稿日:2025-05-03 16:00

第5週「人生は喜ばせごっこ」#25

 東京高等芸術学校合格発表の日。嵩(北村匠海)は結果を見る勇気が出ず、ひとり座っていた。そこに寛(竹野内豊)が現れる。嵩の表情に、「絶望の隣は希望や」と励ます寛だったが、まだ結果を見ていなかった。寛は嵩の腕を掴つかみ急いで掲示板に向かう。

 そのころ、のぶ(今田美桜)は嵩の合否が気になって薙刀の稽古に身が入らずにいた。うさ子(志田彩良)に試合をして負けたのぶに、黒井(瀧内公美)は信念のない己に負けたのだと言う。

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【本日のツボ】

名言おじさん寛、本日の名言

 ※※以下、ネタバレあります※※

 嵩、東京高等芸術学校に合格しました。嵩が自分の受験番号と名前を見つけるシーンがなかったのは残念でした。あまり感情を出さない嵩だけに、どんな喜び方をするのか見たかったような気がします。

 合格発表の場に、学会のついでに寄ったという寛と、なぜか登美子(松嶋菜々子)の姿があり、驚きました。手紙らしきものを手に持っていたので、この日が合格発表の日だということを誰かに聞き、心配で見にきたのでしょうか。

 あいかわらずの派手な着物に毛皮のショールまで巻いていたところから、登美子の暮らしぶりが伺えるというものです。またどこかお金持ちにでも嫁いだのかもしれません。それにしてもいったい誰が登美子に連絡したのか、気になりました。

 気になるといえば、東京・銀座のあんぱん屋さん「美村屋」の写真の中に、ヤムおんちゃん(阿部サダヲ)の姿がありましたが、嵩があれに気づいていたのかどうか。もしも気づいていたとしたら、寛に言って一緒に写真を見て確認するのでは、と思うのですが、ぼんやり嵩のことですから、そこまで気が回らないのかもしれません。

“名言おじさん”寛の本日の名言は、「人生は喜ばせごっこや」でした。「ちびまる子ちゃん」のおじいちゃん“友蔵、心の俳句”並に、“寛の名言”が楽しみになってきました。

“ボウフラ”うさ子ちゃん、豹変

 それはともかく、女子師範学校の厳しさに、「もういやや。うちに帰りたい。帰りたいちゃ」とのぶに弱音を吐いていたうさ子。その姿を黒井先生に目撃され、「めそめそするなっ!あなたは弱すぎる、 鏡川のボウフラよりも弱い。 御国のために強くなりなさい」と、ボウフラ呼ばわりされていたあのうさ子が、すっかり豹変しました。

 薙刀の試合ではのぶを負かすほどの圧倒的な強さをみせます。「学を修め、業を習ひ、以って智能を啓発!」と教育勅語を暗唱するうさ子に、“ボウフラ”の片鱗はありません。顔つきや姿勢、体から出てくるオーラのようなものがまったく違い、その変貌ぶりに驚きました。うさ子役を演じる志田彩良、巧いですね。

 黒井先生にも「小川さん、修練に励んだ成果が出ましたね。教師として、あなたを誇りに思います」と褒められました。「これからのおなごは、小川うさ子、彼女のようにたくましく、かつ、日本女子の美徳であるしとやかさ、節度、両方を兼ね備えるべきです」と生徒たちの手本のような存在に。

 一方、のぶはと言うと、黒井先生に「朝田のぶ。あなたは己に負けたのです。信念のない己に負けたのです」「愛する母国のために全身全霊で尽くす心がないから、負けたのです」と言われます。

 のぶもうさ子のように軍国女子になってしまうのか、と思いきや、ちゃっかり休みには帰省しているようで安心しました。

 来週からは戦争に突入。予告編には豪(細田佳央太)の出征シーンがありました。少し気が重いですが、心して見ましょう。

桧山珠美
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大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

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