離婚後に正体を現したモラハラ夫…志穂さんのケース#5

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2020-01-11 07:02
投稿日:2019-08-23 06:00
 こうして志穂さんは引っ越し、就職活動を始め、小さな広告代理店にコピーライターの職を得ました。何が何だかわからないままに終わってしまった不思議な結婚生活を忘れかけたある日、志穂さん宛てにメール便や宅配物が届いている、と元の夫・勇太さんから連絡がありました。

突然の来訪、別れた夫は笑顔を浮かべていた!!

 郵便局宛てに転居届を出していても、それ以外の宅配会社経由のものが旧住所に届いてしまう、ということがあります。全部まとめて着払いで転送してほしいと頼み、勇太さんからは快く了解の返事がありました。しかしある日突然、勇太さんはそれらの荷物を持って志穂さんの新居にやって来たのです。気まずい思いで受け取った志穂さんに、勇太さんは笑顔で言いました。

「このへんにファミレスある?朝食べないで電車に乗ったから、お腹空いちゃって」

 そう言われると、わざわざ遠いところまで来てくれたんだっけ、という気持ちになり、財布を持って一緒に外に出てしまいました。志穂さんが頼んで来てもらったわけではないのに、とっさに「断ったら申しわけないな」という気持ちを植え付けられていました。実は、無意識に負い目を感じさせるのは、モラハラ男が相手をコントロールする常套手段の一つなのです。この瞬間から、勇太さんはモラハラ夫の本性をあらわにしていきました。

モラハラ夫が笑顔で解き明かした自分たちの結婚生活の意味

一度も不倫していないと言い放った元夫

 志穂さんは別れた夫と二人でファミレスにいることが気になってきました。夫には不倫の相手がいたはず、思わず「LINEの彼女はどうしているの?」と聞きました。すると勇太さんは、楽しい秘密を打ち明けるような笑顔を浮かべて、信じられないことを言いはじめたのです。

「LINEの人なんて居ないよ!俺は一度も不倫なんてしてないんだから」

「えっ?……どういうこと!?じゃあ、LINE通知は?無言電話は?」

「全部、俺が仕込んだの。だからほら、俺が家に居る時には電話なかったでしょ?」

「そんな……!なんで?なんで私をだましたの?」

「だましたわけじゃないよ、リセットするにはこの方法が早いと思ったからさ」

「リセットって……結婚をリセットってこと!?」

「そう。うちのお袋、異常だと思わない?結婚急かして、近くに住まわせて、俺よりも志穂ちゃんと一緒にいる時間が多いなんてさ、あの人嫁コンだよ」

「でも……お義母さんは私を大事にしてくれたよ……?」

「それはどうかな?志穂ちゃんのこと、孫を産んでくれるAIみたいに思ってるよ、あの人は」

モラハラ夫が画策した結婚から破綻まで

 単身赴任のお義父さんとの夫婦仲は冷えていて、淋しいお義母さんは勇太さんに早く結婚しろ、とせっついていたというのです。40歳までは結婚せずに遊ぶ気でいた勇太さんは、「彼女いないの?応援するから早く結婚して!」とうるさいお姑さんを黙らせるために、お姑さんが気に入りそうな志穂さんと結婚して、不倫を偽装して離婚したというのです。志穂さんが傷ついていることに気づかず、あり得ないことを世間話のように話す勇太さんの異常さに志穂さんはゾッとしました。

「違うよ……異常なのは勇太さんの方だよ!私のこと、人間だと思ってないじゃない!!」

 志穂さんは席を立ち、逃げるようにマンションへ帰り、ヘッドホンで音楽をかけてベッドの中に入りました。いつまでも震えが止まりませんでした。自分が結婚した男は、お姑さんからの干渉の防波堤として自分を利用したモラハラ男だったのだ、と志穂さんは初めて気がついたのです。

神田つばき
記事一覧
作家・コラムニスト
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”、女性に生まれたことの愉しみを探そうと緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、女性の悩みや疑問を解き明かすコラム「性に纏わるあれこれ」
イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などの企画も。X

関連キーワード

ラブ 新着一覧


「好きすぎて辛い」と感じる5つの理由&楽になれる対処法
 誰かを好きになるというのは、とても素敵なこと。恋をすることで、生活にハリが出てきたと感じている人も多いでしょう。しかし...
恋バナ調査隊 2020-12-15 06:00 ラブ
恋活アプリで男性が「真剣に付き合いたい」と思う女子の特徴
 恋活や婚活の出会いの場として欠かせないのがアプリ。しかし悲しいけれど、男性側の「ヤリモク」の場として利用されていること...
若林杏樹 2020-12-14 06:00 ラブ
情熱的にキスしたい♡男性に上手におねだりする方法&注意点
 好きな彼と一緒にいる時、「今、キスしたい!」と思う瞬間ってありますよね。そんな時、恥ずかしさからその気持ちを隠してしま...
リタ・トーコ 2020-12-13 06:00 ラブ
好きな人と長続きするLINEの頻度&恋が盛り上がる内容♡
 好きな人との関係を縮めるのに重要になるのが、LINEでのやりとりです。でも、毎日LINEしたほうがいいのか、少し時間を...
恋バナ調査隊 2020-12-13 06:00 ラブ
交際しているのに…会おうとしない彼に不安がループする女性
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2020-12-12 06:10 ラブ
交際後すぐに態度が豹変…彼女からのLINEに恐怖する男性
「冷酷と激情のあいだvol.24〜女性編〜」では、「付き合おう」と合意があったはずなのに、彼氏がよそよそしくて悩んでいる...
並木まき 2020-12-12 06:11 ラブ
結婚は愛かお金か…貧乏で優しい男と金持ちで浮気する男
 男女問題研究家の山崎世美子(せみこ)です。愛かお金か、結婚するならどちらを優先するかというこの“究極の選択”。結婚前の...
山崎世美子 2020-12-12 06:00 ラブ
好きな男性が「マザコン」か否かわかる“たったひとつの質問”
「結婚するにあたっては、マザコンな男だけは勘弁……!」と決めている女性は多いですよね。ただ交際しているだけならば、彼との...
並木まき 2020-12-11 06:00 ラブ
恋人からのLINEが面倒…傷つけずに頻度を減らす対処法は?
 一般的には、女性のほうがマメにLINEを返すイメージがありますが、中には毎日何回も届く恋人からのLINEにうんざりして...
恋バナ調査隊 2020-12-11 06:00 ラブ
あなたは大丈夫? 女性が思わず貢いでしまう“3つのパターン”
 男性に貢ぐ女性がいます。はたから見れば、お金がもったいない、自分のために使えばいいのに、と感じるかもしれません。けれど...
内藤みか 2020-12-10 06:00 ラブ
あなたはどの男子が好み? “何系男子”8タイプの性格&特徴♡
 近年種類が増加傾向にある「◯系男子」。昔は、数個のタイプに分けて表現していましたが、現在その種類は50種類以上もあるそ...
恋バナ調査隊 2020-12-10 06:00 ラブ
“好き”と“尊敬”の違いって? 自分の気持ちを確かめる方法5つ
 尊敬できる人がいるということは、とても幸せなことです。でも、その相手が異性だと、「これってただの尊敬? もしかして好き...
恋バナ調査隊 2020-12-09 06:00 ラブ
「実はかつら」告白にショックで号泣…でも結婚したかった。
「何歳からでも夫婦になるのは遅くない」とお伝えする本連載。インタビュアー・内埜(うちの)さくらが、40歳以上で結婚した男...
内埜さくら 2020-12-08 06:00 ラブ
遊び人の彼を本気にさせるには?彼が最後に選ぶ女になる方法
 好きになった人が遊び人だと、不安は尽きませんよね。「きっと私には本気になってくれない……」と、自信をなくしている人も多...
恋バナ調査隊 2020-12-08 06:00 ラブ
元カレが結婚…!つらいモヤモヤを早く忘れる「近道」とは?
 元恋人が結婚するとわかると、もう吹っ切れたと思っていたのに、「なんで私のときに結婚してくれなかったの?」とモヤモヤした...
若林杏樹 2020-12-07 06:01 ラブ
彼に復縁したいと思わせるには?復縁までにするべき行動4つ
 大好きな彼と別れてしまったけれど、どうしてもやり直したい!という気持ちが抑えられなくなることってありますよね。でも、復...
恋バナ調査隊 2020-12-06 06:00 ラブ