もう普通の枝豆では物足りない…
枝豆をさやごと口に入れた瞬間、ジュワッとスープが出てきて、塩、山椒(さんしょう)の香り、唐辛子のピリッとした味わいが広がります。豆に汁が染みて、味が深い。
もともと中国に伝わる伝統料理で、上海では紹興酒の搾りかすをもう一度、紹興酒に浸して搾ります。搾った汁は香りと甘味が強くなり、それに枝豆をつけて食べるのです。それを日本風にアレンジした、酒飲みのために考えられたような料理です。
「普通に皿に盛り付けると、ただ枝豆を湯がいたようにしか見えないので、あえて汁につけたままの状態にしました。枝豆の両サイドを切ることで、そこからうま味が入り込みます。上品に1つずつ取り出して食べるのではなく、1さやごと口に放り込んでください」
味もさることながら、見た目も鮮やか。下準備として、あらかじめ枝豆を塩で揉んでおくと、枝豆の表面が塩の粒子で傷つけられ、表面の細かな毛が取れ、湯がいた時に緑色が映えるそう。
枝豆の常識を覆す一品。これを食べたら、もう普通の枝豆では物足りなくなります。
材料
・枝豆 1袋(約180グラム)
・鷹の爪 10本
・粒山椒(中国山椒) 10粒
・塩 適量
・老酒または日本酒 少々
レシピ
(1)枝豆は生のまま両端を切る。
(2)たっぷりの塩でスリ込むように揉む。
(3)沸騰した、たっぷりの湯で5~6分茹でてザルにあげる。
(4)水400㏄、塩12グラム、中国山椒、鷹の爪と酒を合わせて沸かす。
(5)沸騰したら枝豆を入れ、温度が下がるのでもう一度沸かして、冷ませば完成。
本日のダンツマ達人…矢谷幸生さん
▽矢谷幸生(やたに・ゆきお)
大阪府松原市出身。子供の頃、中華鍋とお玉が当たる「カチン、カチン」という音に憧れ、小学校4年の時、「将来の夢は」という欄に「調理師」と書いた。辻調理師専門学校卒業後、在学中に講師を務めていた千葉県柏市の老舗中華店「知味斎」の料理長にその意欲と熱心さを買われ、9年間、修業を積んだ。料理は全て手作りで「できることは全部やる」という現在の店のコンセプト、経営のノウハウは全て知味斎で叩き込まれた。32歳で店を始め、今年13年目を迎えた。
▽中国菜 香味(シャンウェイ)
2020年、21年と2年連続ミシュランのビブグルマンに輝き、リーズナブルでこだわりの料理の数々が味わえる。常に新しい味を求め続けるオーナー兼シェフの矢谷さんは、オープン以来、毎年4、5回、わざわざ休暇を取って北京や上海、四川省、香港などに買い付けに行っている。山積みにされた数種類の唐辛子や山椒を味見し、どんな料理に合うかを考え、納得したものだけを仕入れるというのだから探求心旺盛だ。店の名前は「知味斎」の「味」と、同店で一緒に修業した先輩が経営する四川料理店「飄香」の「香」から取った。「飄香」は現在、銀座三越など東京で3店舗を展開する有名店だ。大阪府大阪市北区西天満3―6―15。
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