出会い編<2>ヘイ! 48歳年上のひろしにノーブラの挑戦状

小悪魔ドルチェ寿司 編集者
更新日:2019-07-28 17:38
投稿日:2019-03-08 06:00
 わたしとひろし(非仮名w)の48歳差の激しすぎる恋――男は何歳まで男なのか、81歳との恋愛模様とはいかなるものか。ホットなイットボーイというより、じわじわ低温やけどさせる引退系男子。そんな男を好いて惚れ尽くしたわたしの話をしてみたいと思います。今回は2人が出会った晩のブラジャー騒動(えっ?)について――。

もっといたぶって欲しくなり…

【vol.3】

 48歳年上のひろしが初対面のわたしに放った記念すべき最初のひと言――。

「お前、化粧も服装もさいっっあくやなぁ。ブラジャーも見えとるやないか」

 それを聞いて、いろんな感情が駆け巡るなか、脊髄反射的にわたしがとった行動は、「これオフショルダーのための“見せブラ”なんですよ」

 と言うよりも先に、腕を背中に回してパパッとブラジャーのフックを外し、両腕からブラのストラップを抜いて、ブラジャーを脱ぐことでした(さいてい)。

 早ブラ脱ぎは、胸を張れるわたしの唯一の特技です。高知に行ったとき酔っ払ってどこかでブラを脱いだら、その後、どこかのクラブの椅子の装飾品となって発見された事例もありました。

 それはさておき。周りのお姉さま方が眉をひそめ、おっさんがわいのわいの手を叩いて喜ぶなか(このご時世に燃料投下……)、引っ込みがつかなくなったわたしは、次いでおしぼりを手にしました。ハーラン・エステートのカルトワインやシャトー・ペトリュスのヴィンテージなどの豊潤な芳香に酔っていたのか、気付いたらこう言い放っていました。

「じゃあ、してください」

「は? なにをや」

 わたしはそそくさと、おしぼりでお化粧を落とし始めました。お店の方、貸しおしぼり会社(?)の方、ごめんなさい……。しのぎ的におしぼりを汚してしまって……。

 でもその時のわたしにはこうするしか、ほかに手はなかったのです。ひろしの挑発的なあのひと言、扇情的な瞳、そしてなによりどこにでもいる金太郎飴のような女であるわたしをいたぶって、してやったりとした表情で見下ろしてくるひろし。

 いま思うに、ひろしの周りにいるいつもの金太郎飴女だったら「ひどいですぅ」とか「やぁだぁ」とか言って、お茶を濁すかさっさとこの場をしのごう(黙れクソジジイ)と考えるに違いがないのですが、ひろしはわたしのドM根性に火をつけました。

 もっといたぶって欲しくなってしまって、アイラインも眉もアイシャドーも全部落としたわたしは、こうも言いました。

「そんなこと言うなら……して欲しいです、お化粧」

「おう?」

 爛々と瞳を輝かせ、片眉を上げるひろし。

(ちなみにこの片眉上げ、西洋人は半数くらいができるそうだけど、日本人は2割くらいしかできないそう:出典不詳の超絶ムダ知識)

 そして「誰か眉墨貸してくれい」と言い、その場にいた女性からアイブロウを奪うやいなやわたしの隣を陣取り、それはそれは優しくわたしの頬を左の掌で包み込んだのでした。

 48歳も年上の男性がわたしの頬を支えながら、真剣な顔で眉のラインを描き、濃淡をつけながら眉墨ひとつで力強くアイラインを引き、そしてアイシャドーを優しく引いている――。

 わたしの目はひろしの瞳に釘付けになっていました。

 初対面でこんな間近に顔が近づくなんて、初めてです。ひろしの顔ももはや、近すぎて見えない。

 あのう、たまにありませんか? 

 近すぎて、その近すぎる目の前のものしか見えない現象。近すぎて、48歳という年齢差が見えなくなって、その時のわたしはひろしの瞳しか見えず、その瞳が猛々しくてセクシーでマスラオ感がすごくって、ブラジャーを外したわたしの乳首がぴったりしたワンピースのなかで立って、もう、それは立ってしまって困りました。

ふたりでふるふる。

 頬が熱くてひろしの掌の熱と相まって、ぽわんとしてきたところで、ついにひろしが言葉を発しました。

「よし」

 皆も訝しがりながら我々を見ていたけれど、意外に、というか慣れというものは恐ろしいもので(突然のノーブラ、酒席で化粧、ふたりの世界、そもそも個室ではあるものの銀座の老舗料亭で珍妙な時間が流れているといった意味で)、お姉さま方もおっさん方も「ずっと良くなった」と口々に言ってくださいます。

 わたしも嬉しくなって

「ありがとうございます!! 嬉しいです。おいくらですか」

 なんて軽口を叩くと、ひろしは初めて顔をほころばせて

「お前、ええやつやな」

 そしてスマホを取り出すなり、わたしの顔を写真に撮りました。スマホを使いこなす81歳も初めてなら、男性に化粧をしてもらうのも初めて、シャトー・ペトリュスのヴィンテージも初めて、お尻の下に隠したブラジャーがくすぐったい心持ち……。

「この写真、LINEで送ってやるから“ふるふる”しよう」

 と言い、ふるふる画面でスタンバっているひろし。LINEまで使いこなすのか、この好々爺。

 わたしも慌ててふるふる。

 ふたりでふるふる。

 そうして場に落ち着き、もとの活気が戻ると、ひろしはそのまま隣で自分の人生に対するいろいろな話をしてくれました。

 のちのち、いろんなエピソードを交えてその時のお話しや、ひろしの自由っぷりはどこからきているのか書いていきたいと思っているのですが、その当時は気づかなかったけど、今なら分かることがあります。

 たとえば、あの夜の突然の化粧デモンストレーションを銀座の老舗料亭で突然やり始めるなんて、世界広しといえどもひろししかいないはず。広しといえどもひろしだけ(しつこい)。でもそこには、彼なりの哲学があるのです。

 まずその料亭には40年近く通い詰めていて、働いているすべての人と旧知の仲であること、長年の常連ということで少なくない投資をしていること、そしてオーナーと家族ぐるみの仲であること、そういった長年の信頼と投資があってこそ、ひろしの自由が許されるのです。

 そしてその場でノーブラになったわたしは、ひろしの地盤があるからこそわたしも蛮行が許され、甘えられたのです(どこぞの投資信託のCMのよう)。

 からの~、テイクアウトされました。

 ギリギリアウトな次回(3/15更新予定)に続きます。

小悪魔ドルチェ寿司
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出版社で勤務のかたわら、現場主義のスケベライフを送っている最中に81歳と恋に落ち同棲生活開始。

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