青唐辛子の量はお好みで
「メニュー名だけだと洋風に見えますが、オムレツの形状にした卵焼きです」と、ちょっぴり照れ気味の店主・土屋さん。
渡航先で食べた洋風の辛い卵料理が忘れられない、和食でも食べたい。そんな知人からのリクエストを受けて考案したそう。いまや「ユの木」の定番人気メニューです。あえて卵焼きと名づけなかったところに誕生までの物語を感じさせます。
店では干ししいたけ、煮干し、昆布、かつお節で丁寧にだしをひいて調理しますが、家庭の晩酌ではなかなかハードルが高いため、簡易版では能登地方の魚醤「いしる」を使ってうま味を加えます。スーパーでも手に入りやすいタイの魚醤「ナンプラー」を代用してもいいそうです。
「卵の火入れ加減はお好みですが、とろっとろの半熟より、ある程度、火が入っている方がおすすめです。ピーマンは個別に火入れすることで独特の風味がより際立ちます。辛いのが好きな方は、ぜひ青唐辛子の量を増やしてみてください」(土屋さん)
何事もやや強めの刺激を求める記者は“青唐3本”が好みでした。ご参考までに。
材料
・卵 Lサイズ 2個
・ピーマン 2分の1
・しらす干し 5グラム(カニやホタテなどで代用可)
・無塩バター 10グラム
・マヨネーズ 適量
だし
・水 90㏄
・いしる 30㏄(ナンプラーでも代用可)
・青唐辛子 2本
レシピ
(1)だしを作る。水といしるを混ぜ合わせ粗みじんにした青唐辛子を加えておく。
(2)ピーマンを5ミリ目安のさいの目に切っておく。
(3)ボウルに卵を割り入れ、1としらす干しを加えて、菜箸でよく溶き混ぜる。
(4)フライパンでバターを溶かし、2を入れて軽く炒めたら3を入れる。やや固まってきたら、箸でゆっくりとかき回し、好みの焼き加減にする。
(5)器に盛りつけ、マヨネーズを添えて出来上がり。
本日のダンツマ達人…土屋為芳さん
▼つちや・ゆきよし
1974年生まれ、静岡・伊豆出身。地元の旅館でのバイトを皮切りに、東京の銀座や赤坂見附、大阪、箱根などでの修業を経て、40歳で独立。食べ歩きの趣味は「料理人にとっていいことしかない」。店の立ち位置を“第三者目線”で進化させ、外観、料理、雰囲気すべてが一体となった“土屋ワールド”をつくり出す。リピーターが多いのもうなずける。
▼食堂 ユの木
市場により近い場所を求め、江戸川区西葛西から現在の月島の路地裏に移転してきたのは2018年3月のこと。お通しの代わりに「おばんざい三種」もしくは「季節の小鉢三種」を選ぶシステム。かわいらしい手書きのお品書きには、懐石を中心とした店で腕を磨いた主人による肩肘の張らない和食ベースの逸品が並ぶ。料理の多くは3ケタの価格設定。白木のカウンターで喉を潤しながら“三種”をつまみ、あれこれとメニューを吟味する時間は何物にも代えがたい。東京都中央区月島3―14―2。
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