出張ホストに溺れて淫らに迫った私…待っていた意外な結末

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2021-12-03 06:00
投稿日:2021-12-03 06:00

ホームページから消えた彼の名前

――おつらかったですね。

「はい、つらかったです。今もどこかでタクミ君と触れ合っているお客がいるかもしれない。いや、プライベートでは恋人がいて当たり前……セックスもしているんだろうなと思うとノイローゼになりそうで……あの時は一気に3キロは痩せたと思います。

 でも、時間の経過というのは不思議ですね。日に日に元気を取り戻していきました。

 またタクミ君を指名しようか、いや、今度は別なホストがいいかしらと、HPを見る元気が出てきたんです。

 そんなタイミングで世の中が一変しました。

 コロナ騒動が始まったんです。

 コンビニやドラッグストアからは消毒薬やマスクが消え、三密禁止、外出自粛が始まり、リモートワーク中心の生活となりました。

 生活は一変しましたが、幸いにも私はWEB関係の仕事でしたし、夫や娘もリモートで乗り切りましたね。

 不便さはありましたが、我が家は各自の部屋があるせいか、苛立ちをぶつけ合うような大きな影響はなかったです。

 タクミ君が所属する出張ホストのHPも時々チェックしましたが、「現在、営業はしておりません」と表示されたまま。

 だから、仕事の合間にネットで彼を探しました。

 タクミと言う名前はおそらくホスト用の源氏名でしょうから、『劇団』『役者』『俳優』などにヒットするかなと思って、必死に……でも、見つけることはできません。

 目をつむると、まぶたの裏に浮かんでくるのはタクミ君との熱い時間です。

 初めて会った時のトキめき。クールな美青年なのに、子犬みたいに可愛らしく笑う表情。手つなぎデート。ラブホテルでのオイルマッサージ、キス、抱擁、クンニリングス、フェラチオ……」

――つらさもありましたが、美しい思い出ですものね。コロナが落ち着いた最近はいかがですか?

「かつての生活が戻りつつあります。

 家族が皆、健康で過ごせたことに感謝していますし、仕事もなんとか頑張れています。

 ……で、出張ホストのHPにアクセスしたら、営業再開したものの、ホスト欄にタクミ君の名前はありません。

 彼、辞めてしまったようなんです」

どん底を味わった女は強い

――えっ、そんな……。

「私は焦りました。

 もう二度と逢えないの……?って。こんな中途半端に終わっちゃうのはひどすぎる。もう体の関係なんていらない……手つなぎデートだけで幸せだから、またあの笑顔に逢いたくて……」

――T子さんの目の端が涙に光った。

「出張ホストとはいえ、タクミ君に逢えたことは私への大きなギフトです。

 枯れていた心と体をこんなにも潤わせてくれて……つらいときもあったけど、今は後悔していません。7万円と言う大金も、無駄じゃないと思いたいな。

 またいつかどこかで再会できることを信じて、日々を懸命に生きるのみです。

 一度どん底を味わった女は強いですよ!(笑)」

――目を細めてほほ笑む彼女は、希望やパワーに満ちあふれていた。

 一度、どん底を味わった女は強い――筆者はその言葉に大きくうなずきながら、彼女の幸せを願った。

 了

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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