一本ずつ断ち切られた“人間関係の枝” 美沙さんのケース#3

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2020-01-11 07:07
投稿日:2019-04-28 06:00
 職場の人間関係を断ち、自分だけに服従するように仕向けたモラハラ男・健斗。眠る時間を削られて、美沙さんは仕事に対するやる気や理性を奪われていきました。

社会から孤立した分だけ愛される!?

他人からどう見られるかより男の機嫌を優先

 遅刻が増え、会社で居眠りをし、服装にかまわなくなる……。シャンプーやお化粧をしないで出勤する日もありました。

 美沙さんの職場は、受験関連の書籍を作っている堅い企業です。目に見えて悪くなった美沙さんの勤務態度が問題になり、ある日上司に呼び出されました。

「みんながいろいろ言っているの、知っている? あなたが……夜のバイトをしているんじゃないかって」

 40代の女性上司は言いにくそうにしながら、美沙さんが売春か風俗をしているのではないか、と皆が疑っていると告げました。ひどい噂に美沙さんは傷つきましたが、「ちがいます」としか言えません。

 上司から指摘されなくても、自分がだらしなくなっていることには気づいていました。それでも、そんなことより健斗に機嫌よくいてもらうことのほうが優先だ、と思ってしまうのです。

職場での孤立を知ってよろこんだモラハラ男

 帰宅して健斗に報告すると、驚いたことに健斗は美沙さんを強く抱きしめたのです。

「そんな酷いこと言うなんて! みんな美沙に嫉妬しているんだよ! 美沙が綺麗で、仕事もできて、年下の彼氏がいるのが許せないんだ……かわいそうに!」

 美沙さんは驚き、そして天にも昇る気持ちになりました。毎夜のように反省を求められ、自分に自信を失っていたのに、「健斗は私を認めてくれていたんだ! 健斗は私を愛してくれていたんだ……!」と思ったのです。

 思わず美沙さんも健斗の首に腕を回し、抱きつきました。「セックスするんだと思いました。終電を逃して健斗を怒らせた日から3週間、指一本もふれてくれなかったから」

 しかし、キスしようと唇を寄せた美沙さんの髪をつかみ、健斗は自分の股間に押しつけて仰向けに寝ました。

「早くして。眠いから3分でお願い」

 口でいかせろと指示されて、美沙さんは従いました。この日から、たびたび健斗の性欲を口で処理させられるようになったのです。

神田つばき
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作家・コラムニスト
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”、女性に生まれたことの愉しみを探そうと緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、女性の悩みや疑問を解き明かすコラム「性に纏わるあれこれ」
イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などの企画も。X

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