生活保護者の柩に添えられた友人からの別れの花は「心の花」

斑目茂美 開運花師
更新日:2020-02-15 06:00
投稿日:2020-02-15 06:00

あまりにも寂しい最期の別れ

「息子さんも病気だから仕方ないけど、自分の母親が死んだって何するわけでもないし、Aちゃんの兄弟もたいして来ないって言うしさ。Aちゃんに最期のお別れをしたい人だけが焼き場に行ったのよ。そうしたら、知らなかったんだけどさ……」

 仕事をしながら話していたミッちゃんが手を止め、声を上ずらせながら語ります。

「ほかの市町村はどうなんだか知らないけど、この市では警察上がりのご遺体とか、ちょっとご事情のある方のご遺体とかを焼く場所って、一般の人とは違う場所で焼くのね。

 ガランとただ広くてね、机も椅子も何も無いの。お経も読まれないし戒名もないし、焼き上がるまでの参列者の待合室もなければ、一輪だって花もないの。

 ほんとに何もなくてさぁ、ただお釜にご遺体を入れるだけ。それじゃあんまりだって話になって、私がお花を持って行って、参列者でお経を唱えたんだけど、それで最後の最後にさぁ……」

 そう一気に話して、それからのミッちゃんはたまらず涙声になってしまったのでございます。

 最期の別れに立ち会ったわずかな参列者の中に、どうやらAちゃんと仲の良かったお友達のおばあちゃまがいたのでございますが、いよいよ柩の蓋を閉める直前、腰のひどく曲がったそのおばあちゃまが、ご自分のお庭に咲いた小菊の小さな花束を持ってAちゃんに近付き、すがりついて泣いていた、というのでございます。

「小菊をAちゃんの顔の横に置いてあげてさ、おばあちゃんがすがりついて泣いたの。小菊って言ったって、茎なんかおばあちゃんの腰と一緒で全部曲がったお粗末な小菊なんだけど、その光景を見てみんなが泣いちゃったの。

 私が持って行ったお花なんて問題にならないくらい、Aちゃんの顔の横に置いたあの小菊、本当に本当に綺麗だった。 

 Aちゃんの顔がパァって明るくなってね、まるでAちゃんが笑ってるみたいだったよ。あの綺麗だった小菊を私はきっと忘れないと思うわ」

斑目茂美
記事一覧
開運花師
半導体エンジニアを経て花業界に転身。イベント・ホテルなどの装飾も手がける生花店を営む傍ら、コンテストで優勝・入賞を重ね、雑誌・新聞等に作品を発表する。神奈川各所にて花教室を開催。障害者支援も花で実践。悩ましくも素敵なお客様を「花」で幸せへと導く道先案内人。ブサかわ猫店長「さぶ」ともに奮闘中。Facebookやってます。

ライフスタイル 新着一覧


アナタの人気度急上昇!「チューリップ」の飾り方テクニック
「本当の妖精って見たことある?」――。知人との他愛のない話の中で、思わず二度聞きするような質問をされたことがございます。...
ワンオペ育児はあり得ない! 見習いたい台湾パパの働き方
 最近日本では、ワンオペ育児という言葉をよく耳にします。ワンオペ育児を頑張っている日本のママさんには尊敬の念しかありませ...
ポツンと一軒家みたい? 小さな集落で“にゃんたま”を大捜索
 にゃんたまカメラマンは今日もゆく!  小さな集落でにゃんたま君がいる場所を聞き込みし、さらにそこからずっと離れた...
蕁麻疹と息苦しさで救急搬送…医者に見逃された“薬の副作用”
 女性ではおよそ30〜60人にひとり、男性ではおよそ50〜100人に1人がかかると言われている甲状腺疾患。圧倒的に女性に...
令和を幸せに元気に過ごす!「赤」の名言集をお守り代わりに
 甘美な欲望に貪欲かつ忠実なオトナ女子に、オススメの作品を紹介するコクハク発のエンタメ情報です。今回は書籍、「心を元気に...
首をポリポリ お餅のような“にゃんたま君”の絶妙チラリズム
 寒い日が続くけど、風もなく穏やかな日。  きょうは、港で出逢ったにゃんたま君の絶妙なチラリズムです。  友...
彼に「また会いたい」と思ってもらうには? 重要ポイント2つ
 1回目のデートのお誘いはくるものの……なぜか2回目につながらない。この後展開はあるの? ないの? とモヤモヤした気持ち...
運動不足で介護状態に? 今から始める「介護予防テク」3選
 日本では多くの社会人が、運動不足だと言われています。一日の多くの時間を占める「仕事」においても、ひと昔前とは随分と事情...
初心者必見! アナタに合う良い花屋をみつけるポイント5選
「お花が好きなのにお花屋さんには行きたくない!」ちょっとした宴席で、初めてお会いする方からだいぶ衝撃的なお言葉をいただき...
「よきにはからえ」上がったシッポは“にゃんたま”の友好の証
 やわらかい日差しと蒼い空。  そんな朝はカメラを持って『にゃんたまω散歩』に出かけよう。  にゃんたま君に...
心労をなくしたい…自信なく“プチ不調”なときに試したいこと
「何かあったわけでもないのに、なんとなく憂鬱な気持ちが抜けない……」  それはもしかしたら軽度な鬱かもしれません。冬は...
波乱の幕開け…30代終盤に「甲状腺機能亢進症」と診断されて
 女性ではおよそ30〜60人にひとり、男性ではおよそ50〜100人に1人がかかると言われている甲状腺疾患。圧倒的に女性に...
面倒くさい!飲まないとダメという男性と共有する時間はない
 私はお酒があまり強くなくてほぼ飲まないのですが、飲み会やデートをすると「飲まないの? 飲んだほうがいいよ!」と無理やり...
「デートの邪魔にゃ!」しつこい尾行にぷんぷん“にゃんたま”
 私もそろそろ、にゃんたまωのプロになってきたので、  隙間からチラっと見える感じで、どんな立派なものが存在するの...
口が軽い人の5つの心理や特徴!「ここだけの話」に要注意
 恋愛や人間関係に思い悩んだ末、意見を聞いてみたくなって誰かに秘密を打ち明けたことがある方は多いでしょう。でも、うっかり...
恋愛&出会い運アップに期待大!春の門出の「スイートピー」
 昨年末の紅白歌合戦をご覧になった方、大変多いと思います。ワタクシは仕事中でございましたので、お正月にゆっくりと拝見させ...