閑散とした観光地で見かけた 旅行中の男性中年カップルの話

うかみ綾乃 小説家
更新日:2020-04-30 07:03
投稿日:2020-04-29 06:00

ホームに降りたふたりは…

 どうしよう……。動揺した、そのときです。大柄な男性が、離れていこうとする彼の手を、ぐっと握りしめました。そのまま強引に、自分の元に引き戻しました。そうした大柄な彼の顔は、じっとドアを向いたままでした。ただ、恋人の手を握る手と腕に、太い筋が浮いていました。手を取られた彼は、また細い首で俯きました。

 電車が停まり、ドアが開き、ふたりがホームに降りました。すると小柄な彼が、今度は自分から、彼氏の腕にそっと腕を絡めました。そうして彼の肩に、ちょこん、といった感じで頭を乗せ、ぴったりとくっついて歩きだしたのでした。痩せた中年男性である彼の、その背中のなんと可憐なことか。

 私の動揺は収まりません。遠ざかる彼らの後ろ姿にまたもや目を奪われながら、まさかの地元で近年最大の萌えに出逢ったことに心で手を合わせつつ、どうぞ良き旅を、と深く祈ったのでした。

うかみ綾乃
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小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

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