甘じょっぱさと歯ごたえが後を引く
「日本料理の神髄は、やっぱり引き算だと思います。若い頃は、あれもこれもと、つい足し算になってしまいがちですけどね」
調理科のある高校を卒業後、数々の日本料理店で修業を積んだ添野光二さん。たどり着いた答えのひとつがこれです。
「口の肥えたお客さんほど、引き算ですね」
それにしても、この一品は、あまりにもシンプル。材料は万願寺唐辛子だけです。3分で完成してしまいます。
「サラダ油を塗った万願寺唐辛子を金属の箸に刺して、ガス台の火でバチッバチッと焼いてください。焦げ目がついたら、熱いうちに醤油とダシの同割のタレにくぐらせ、器に盛ったら花かつおをかける。これで終わりです。カンタンでしょ」
一口、食べると、甘じょっぱくて、歯ごたえがあり、後を引くおいしさ。お酒のつまみなのに、いくらでも食べたくなっちゃう。おすすめの酒は、断然ハイボールです。
「万願寺がなければ、獅子唐辛子でもいいですよ」
「素人が料理を上手に作るコツは手を加えすぎないこと。やり過ぎないことです」
このおつまみなら、やり過ぎることもなさそうです。
【材料】
・万願寺唐辛子
・花かつお
【作り方】
(1)万願寺唐辛子にサラダ油を塗り、網で直火で焼く。
(2)焼き目がついたら、熱いうちに鰹ダシと醤油が同割の汁にくぐらせる。
(3)器に盛ったら、花かつおをかける。
本日のダンツマ達人…添野光二さん
▽そえの・こうじ
栃木県出身。58歳。調理科のある高校を卒業後、上京。五反田の割烹を振り出しに京都料理の店、新潟料理の店、ホテルなど日本料理店で修業。
▽櫻茶ヤ
昭和8年創業。いまも芸者を残す都内随一の料亭街である墨田区向島で4代続く老舗の料亭。一歩、中に入ると、多くの文化財や絵画、陶器、掛け軸が飾ってあり、別世界。最近は外国人客も来店している。墨田区向島5―24―10。
(日刊ゲンダイ2017年9月12日付記事を再編集)
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