夫の不倫を「やらかし」ネタにした妻と去っていった相手女性

うかみ綾乃 小説家
更新日:2020-07-29 06:00
投稿日:2020-07-29 06:00

いつだって離婚する

 H美さんの言葉に、一同の男女が感心しています。(前回の話はこちら

「やっぱりなぁ。さすが心が広いというか、腹の据わり方が違いますね」

「だって私はもう、妻というよりマネジャーみたいなものだもの。だいたい恋に盛りあがった人間は止められないでしょ。そのエネルギーを彼は仕事に活かせる人だもの」

「すごい」「奥さん、格好いい」

 確かに、片想いでも人は勝手に盛りあがるし、ましてや好きな人と両思いになったときの万能感ったら凄まじいです。

「でも、焚きつけなければ、いつもの気分だけのプチ浮気で済んでいたんじゃないですか?」

 ちょっと失礼だったかもしれない私の問いに、H美さんは、

「J子さんの写真って、なんとなく影があるでしょう。Kがハマるタイプだと最初にわかったし、彼女もバッグなんかでほだされる女の子じゃないと思うのよ」とにっこりします。

「離婚はしないんですか?」

「いつだってするとKには伝えているの。でもJ子さんのほうが、Kとの結婚をためらっているんですって。それでいつも言い合いになって、Kが泣いて帰ってくるの」

 その後も、KさんとJ子さんは続く中、J子さんがだんだん痩せていくのは周囲の目にも明らかでした。

割れたグラスの欠片で切った指を…

 奥さん公認の不倫なので、誰も彼女を非難しませんが、その分、多少、生活や心が不安定でも、いまはそういう時期なんだろうと、いわゆる大人の距離感というか観察者的な目線で、ふたりのことを眺めていました。

 当時、私は一度だけJ子さんと仕事で一緒になり、数分間、ふたりきりで話したことがありました。

 彼女の右手の人差し指と中指の先に巻かれた絆創膏について訊くと、

「昨夜ね、大切にしていたグラスをうっかり割っちゃったんです」

 彼女らしい、愛嬌のある大きな目で、真っ直ぐこちらを見て言います。

「欠片を拾ったら、指から血が出て。そのままキッチンの床で、指の匂いを嗅いだんです。血が出てすぐのときから、血が止まっていくにつれて、だんだん指の匂いが変わってきて……」

うかみ綾乃
記事一覧
小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

関連キーワード

ラブ 新着一覧


都合のいい女にならない! 逆手にとって恋愛を楽しむには?
 世の中的に「都合のいい女」の対義語は「本命の女」らしいのですが、でも、それって本当? と、疑問に思ってしまう私。本命だ...
リタ・トーコ 2019-07-14 06:00 ラブ
交際中の顔は演技…見栄っ張りな夫を間違えて選んだ妻の苦悩
 見栄っ張りな男と結婚してしまった女性は、苦労が絶えないのも実態です。 魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様分析を得意...
並木まき 2019-09-05 14:47 ラブ
悲劇はここから…夫のマザコンが発覚した摩訶不思議な瞬間
「私が結婚した男は、マザコンじゃないはず」と思っていても、入籍後に、まさかのマザコンが発覚するパターンもあるようです。 ...
並木まき 2019-07-13 06:00 ラブ
彼女にしたいと思う女性とは? 異性を落とす戦略的モテテク
「いい人と出会ったのに、2回目に繋がらない」「いつも遊びの関係で終わってしまう」  出会いはあるのに、好きな人はできる...
伊藤早紀 2019-07-13 06:00 ラブ
喧嘩で黙る男性の奥底で何が? その理由をパターン別に分析
 男女の喧嘩で女性が“話し合いたい”と思うと、男性が黙って何も言わなくなるケース、よくありますよね。これってなぜ起こると...
しめサバ子 2019-07-12 06:00 ラブ
レトロブームな今夏は「ゴールデン街」でニッチな出会いを♪
 コリドー街、恵比寿横丁――。都会では「ナンパ街」として名の知れるスポットもたくさんありますが、最近はどこもちょっと情報...
ミクニシオリ 2019-07-12 06:00 ラブ
男性の嫉妬サインに気づいたら? 嫉妬を解く“魔法の言葉”♡
 一見クールに見える男性でも、嫉妬のサインを無意識に出していることがあるって知っていますか? 男性の嫉妬を放っておくと、...
モテ女性に学ぶ 男性からほぼ100%プロポーズされる最強テク
 アラフィフのYさんは、デートをした男性から100%プロポーズされてしまうというすごい女性です。結婚し、人妻となった今で...
内藤みか 2019-12-11 06:00 ラブ
高嶺の花より手頃な花! 「絶世の美女はモテない」は本当?
 誰もが憧れるようなルックスと、それだけにとどまらない内面的にも賞賛できる女性を“高嶺の花”と呼びます。彼女たちは、常に...
東城ゆず 2019-07-11 07:26 ラブ
うるさーい! 意識高すぎる「ロジハラ男」に気をつけて…!
「最近の若いのは何でもハラスメントにしやがる……」  そんな中年男性のぼやきも耳に入る今日このごろ。セクハラはもちろん...
ミクニシオリ 2019-07-10 06:00 ラブ
男性が浮気したくなる理由と浮気をさせない女になる方法3つ
 男性に浮気されたとき、多くの女性は辛いですよね。見下されて、踏みにじられたようで怒りも湧いてくるはず。思わず「なんでこ...
東城ゆず 2019-07-09 06:00 ラブ
モテる女は顔じゃない…美人でなくても彼氏が途切れない秘密
 結婚につながる恋コラム第9回は、モテるためのスキルについて。皆さんの周りで常に彼氏がいる女性ってどんな女性ですか? 今...
山本早織 2019-07-09 06:00 ラブ
恋人と知り合うきっかけ 米国は4人に1人がマッチングアプリ
 日本ではなんらかの婚活(恋活)サイトやアプリで知り合い、結婚に至った人が約5%いるそうです(「婚活実態調査2018」リ...
内藤みか 2020-05-20 11:22 ラブ
カップルの喧嘩の原因って? 彼にムカついたら試すべき方法
 彼との喧嘩はムカつくことも多いですよね。 女性からしたら「どうして、理解してくれないの?」と思います。カップルの喧嘩は...
東城ゆず 2019-07-08 06:00 ラブ
ど本命な彼を落とすには胃袋を掴むより衝撃なメス力を養え!
 電子書籍も含めて、発売たちまち6万部突破のベストセラー『魔法の「メス力」』(KADOKAWA)の著者で恋愛コラム...
神崎メリ 2019-07-07 06:00 ラブ
運命の歯車? 鬼嫁と結婚してしまった男性の悲劇的な経緯3選
「鬼嫁」と評される女性と結婚してしまった男性には、どんな経緯があるのでしょうか。魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様分析...
並木まき 2019-07-06 06:00 ラブ