忘れた振りで「否認」を続ける私にストレスを溜めていく女

うかみ綾乃 小説家
更新日:2019-11-14 18:20
投稿日:2019-11-14 18:00

なぜGから逃げなかったのか

 最初から狂気を感じていながら、なぜもっと早くに彼女から逃げなかったのか。

 理由は、私には仕事が大切だったからです。

 時期としても、彼女は私が会社と縁を切りにくいタイミングで、決定的な行為、レイプをしてきました。

 他人に助けを求めることは考えませんでした。彼女からのさらなる復讐と、社会による二次被害への恐怖がありました。

 なによりも、私はいつの間にか、Gに対して少しでも恐怖を覚えた途端、一気に思考が停止する状態に陥っていました。

 Gの怪進撃は続きます。

 一度目のレイプの数日後、仕事で会った際に彼女が囁きます。

G「この前の綾さん、可愛かった」

私「なんのことですか。私、酔うと記憶をなくすんで」

 私はひたすらとぼけました。自分がされたことを認めた上で、彼女との仕事を続けることは不可能でした。

 同時に、忘れた振りをすることで、私が彼女を受け入れていない姿勢を、せめて示したつもりでした。

 けれど、それもGに利用される材料となります。

うかみ綾乃
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小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

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