パートナーへの性依存に悩み苦しむ 24歳ゲイ男性のコクハク

神田つばき 女と性 専門ライター
更新日:2019-06-18 16:05
投稿日:2019-06-17 17:30
 素敵な人とセックスする関係になり、幸せを感じているのに、「この相手を失ったらどうしよう?再び孤独に陥るのが怖い……」とおびえ、不安に苦しんだことはありませんか? 
 このような悩みは女性だけとは限りません。ゲイの男性からの声にお答えします。

結婚相手を探すより難しい性癖のパートナー探し

 コクハクの質問・相談ページから寄せられた、jjさん(24歳・男性)のお悩みです。

「自分はゲイなのですが、最近会ってセックスをした相手を忘れられなくなってしまいました。その人には同居人がいたり、お互い仕事が忙しかったりで、もちろん思うようには会えませんし、いつまで関係が続くかもわかりません。そうなると好きすぎるが故に『自分の知らないところで彼が存在してる事自体が嫌』『彼がこの世に一人しかいないのが耐えられない』みたいな、かなりヤバイ心情になってしまい(笑)、客観的にみれば下らない事だと分かっていても、涙が出てしまうほどつらいです。このような独占欲? 特定の相手との性依存? を鎮める方法はありますでしょうか」

 好きすぎて辛いという気持ち、女性の皆さんも経験があるのではないでしょうか?

3~6ヶ月依存するのは普通だが…

 好きな人に依存してしまうことは誰にも起こりうることです。特に、セックスをするようになって半年ほどの期間はお互いに新鮮な発見が多く、「ひとときも離れたくない」「一生そばにいたい」と強く願うものです。

 3ヶ月ぐらいがピークで半年を過ぎると少しずつ穏やかになっていくことが多いです。しかし、そのように落ち着いていくのは一般的な恋愛の場合で、希少な性癖を共有している場合は話が違ってきます。

 jjさんはゲイですが、私はS男性としかセックスできません。小悪魔ドルチェ寿司先生のジェロントフィリアも対象が少ない性愛だと思います。こういった希少な関係は、世間の男女の結婚のような経済的な活動や子育てを目的とした結びつきにくらべると、相手が見つかりにくいです。それだけに、関係を結んだときの喜びはとても大きく、ピークが長く続きます。

やっと巡りあえた相手を失うのが怖い

 では、なぜjjさんは「涙が出てしまうほどつらい」感情に苦しむのでしょうか。それは、せっかく得た愛をいつか失う、そのことを恐れるからだと思います。今は、相手に自分の気持ちを投げると確実に投げ返してくれる。でも、いつかはこの貴重な輝くボールが返ってこなくなるかもしれない、と思うと冷静ではいられません。

 一般的な恋愛ではなく、なかなか巡り合えない貴重な相手だと思うと、喪失への不安が大きくなるのです。私も苦しんだ経験があります。ゲイやSMの人だけではありません。恋愛恐怖症や醜形コンプレックスに悩んできた人も、やっと得た愛を失うことに怖れを感じがちです。このような苦しさをどうやって鎮めたらいいでしょうか。

愛することで不幸にならない処方箋

 特別な性欲や依存性そのものを消すのではなく、いつかはその対象を失うという恐れを鎮静させることを目指しましょう。

 今のお相手はjjさんにとって無二の存在ですね。でも、絶対に失わない相手、永遠に続く愛欲というものは存在しません。だからこそ今がとても貴重な時間なのです。恐れず、思いきり愛し合うしかないのです。そのことによって、将来不幸に陥る人と、それなりの満足を得る人がいます。その違いを決定づけるものは何なのでしょうか。

愛によって幸せになる人と不幸になる人

 愛するという行動は、実は他者の何かを少しだけ奪います。それは単純に相手の時間かも知れません。あるいは相手に思いを寄せている、別の誰かの心やプライドかも知れません。相手の体を削っている、という考え方もできます。

 所有欲や依存は誰しもが抱く、人間の素直な性向ですね。そこにいろいろな悲しみや嫉妬が生まれます。これも仕方ない、自然なことです。

 だからこそ、何もかも自分の意志と責任でしているのだと決意しておけば、何も恐れなくてよくなります。全ては自分が選んでしたことだという自覚がない人、何でも誰かのせいにする人はいつまでたっても不幸です。自分が招いたことだと思えばつらい感情を克服して、明日に視線を向けられるようになりますよ。

 どうか、愛は何かを奪うものだという本質を知ったうえで、勇気をもって現在のお相手を愛し抜いてください。今よりも強く、今よりも優しくなれたとき、幸せも移ろいやすいものから確かなものに変わります。どうか、二度とない今を大切に!

*私がなぜSM性癖を持つようになったかについては、著書『ゲスママ』に書いています。人に理解されにくい性癖を相談したい方は、コクハクの質問・相談ページからアクセスしてくださいね。

神田つばき
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女と性 専門ライター
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”女性に生まれたことの愉しみを取り戻すべく、緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などを企画。最近は女犯罪者や緊縛表現者に関するZINEの制作・販売を開始。Xnoteblog

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